肝臓がんとは?
症状・なりやすい人・診断・治療方法・5年生存率について、まとめました。
肝臓がんの概要
肝臓とは、人体の腹部右上方にあり、肋骨がつくる「かご」に囲まれています。
肝臓の最大の役割は体全体をめぐる血液をろ過し、ろ過によって得られた材料をもとに胆汁や消化酵素、コレステロール、複合たんぱく質などを作り出し、また、体の有害な化学物質やアルコールを解毒する役割を担っており、私たちの生命を維持する上で必要不可欠な臓器です。
肝臓がんは、アジアやアフリカに非常に多く見られます。
日本での発症率はとても高く、ここ10年間で肝臓がんの患者数は2倍になっています。
これは、第2次世界大戦後の混乱期に輸血などによって、肝臓がんの原因となるウイルスの感染が拡大したためと考えられています。
肝臓がんの症状
肝臓はとても大きな臓器であるため、健康な状態では十分な余力があります。
そのため、原発性の肝臓がんが発症しても、初期段階では自覚できるほどの特別な症状はこれといってありません。
しかし、がんが大きくなるにつれて肝臓の体積、つまり腹部の体積が大きくなるために、上腹部の右側に膨張感や違和感など、最初の症状が現れます。
また、肝炎や肝硬変から生じた肝臓がん(肝臓がんの大半占める)の場合は、初期症状のほとんどは肝炎や肝硬変による食欲不振や、倦怠感、腹部の膨張感、便秘や下痢、突然の腹痛、貧血などが起こります。
肝臓がんそのものによって生じる症状には、強い脱力感や右の肩甲骨の痛み、腹部の腫れや痛み、体重の減少、黄疸などがあげられます。
肝臓がん患者の5年後の生存率
肝臓がん患者の5年後の生存率は、約15%で、がん発症部位に限局する場合でも、約25%程度です。
これは、他のすべての限局がんの平均5年生存率(約75%)と比較して、きわめて低い数値です。
2001年に日本では、3万4311人が肝臓がんによって亡くなりました。
これは、がんによる死亡者全体の中で、肺がん、胃がんに続いて第3位に位置します。
肝臓がんになりやすい人
肝臓がんは誰もが皆、発症するわけではありません。
このがんを発症するの多くは、40~60歳代の、それも肝炎ウイルスに感染してB型肝炎または、C型肝炎(もしかするとG型肝炎の方も)になっている人です。
特に、C型肝炎の患者は、その約80%が最終的に肝臓がんになります。
そのほか、肝臓がんの危険がある人は以下のような人です。
・大量のアルコールを摂取したり、すでにアルコール依存症となって肝硬変を起こしている人
・職場で塩化ビニールなどの工業化学製品にさらされている労働者
・50歳以上の人
・たんぱく同化ホルモンを摂取した人
・がん治療用の免疫抑制剤を使用したことがある人
などが肝臓がんの危険が高いとされています。
肝臓がんの診断・治療方法
肝臓がんの診断では、血液検査で腫瘍マーカー(肝臓がんの細胞が血液中に放出する特殊なたんぱく質)を検査し、また、X線撮影、CT、超音波診断などの画像を用いた診断を行います。
これらによって確定診断ができないときには、
がん病巣に特殊な針や内視鏡を刺して組織を取り出して、顕微鏡を用いて観察します。
肝臓がんの現在の治療法は、主に以下の次の3種類です。
・外科治療(切除)
・肝動脈塞栓術(TAE)
・エタノール注入療法
この他にも、マイクロ波凝固療法や肝臓移植などがあります。
また、2001年にイタリアで、48歳の肝臓がん患者に対して、世界初の治療法が行われました。
複数のがんを発症している肝臓をそのまま切除して体の外に取り出し、外部で放射線治療を行ってから、ふたたび患者の体内に戻す治療が実施されました。
これは、放射線の影響を他の臓器に障害を与えないためにとられた大胆な手術方法でした。
1年後、患者の肝臓からがんは消滅し、肝臓が正常通りに働いていることが確認されました。